日経平均 | 16,892.3 |
TOPIX | 1,354.6 |
騰落レシオ | 123.7% |
RSI | 53.2% |
乖離率 | △0.29% |
売買指数 | 63 |
よろずのに対して怒ったのは、大人気なかったと思う結衣である。
酔った勢いというのもあるが、仕事での因縁から、ついつい結衣をそういう気分にさせたのであった。
「いや、いくら投資が上手でも、あの態度は良くないでしょ。」
半分照れ隠しで結衣が言う。
「そう見えますよね、あれ。でも、あれ、実は師匠の策略なんです。」
「策略?何それ!」
故意に他人をバカにする態度を取ることは、結衣にとっては絶対に許せないと考えていることなので、策略と聞かされて思わず大きな声が出てしまった。
「いや、僕も最初は知らずに怒ってたんですけど、あれは相手に印象付ける師匠のやり方なんですよ。」
「印象付ける??どういうこと??」
「あの時、長谷部は絶対にやってはいけないことをやったんです。損切りするつもりだったのに、その時になったら出来なくなったって。でも、長谷部はそのことを知っているけど理解できていない。だから、理解させる為に師匠はやったんですよ。」
「うん?」
説明されても、意味が分からない結衣である。
「つまり、買って下がったら損切りしないと大損になるってことは、みんな知ってますよね。でも、下がったのに切らなかったのは、長谷部は直ぐに戻って来るという単なる自分の希望的観測に縋ったに訳です。」
「うん。」
「師匠が言ってたと思うけど、どんな銘柄でも倒産しなければ、いつかは買値に戻ります。そのいつかを自分に都合が良いように、直ぐにと長谷部は考えようとしたんですよ。でも、それが裏切られたら、終わりなんですよ、今回みたいに。」
「ええ。」
「だから、そこで。自分の心が弱くなるタイミングで、そう考えたら絶対に成功しないんです。それを知っていても理解できてない、だから実行出来ないんです、長谷部は。それで、そのことを理解させる為に、師匠は鼻で笑ったんです。」
「あのさ、理解するのと、鼻で笑うのとどういう繋がりがある訳?」
鼻で笑うことに、未だに納得できない結衣である。
「それは、普通に説明されたら、知ってることだから印象に残らず、左から右に流れるだけじゃないですか!それじゃ長谷部は、また同じことをやってしまいます。なんせ知ってることなんですから。そこで師匠は、長谷部を鼻で笑ってバカにしたんです。そうすれば、少しでも長谷部に印象が残るでしょ。鼻で笑われるようなバカなことをやったんだって。更に今回は赤松さんが怒ってくれたから、余計に長谷部の印象に残ってるはずです。」
「印象に残ったら理解できるの?」
「印象に残ったら、その勝負のタイミングで、前に笑われたことを思い出すじゃないですか?そうしたら、同じ失敗をしたらいけないと、少しでも躊躇するでしょう。そうすれば、持続せずに損切りするかもしれない。」
「えっ、それで本当に理解できるの?」
「いえ、これだけでは理解出来ないらしいです、師匠が言うには。理解できるようになるには、ちゃんと損切りした成功例を頭に刻み込まないとダメらしいです。一度、間違った癖が付くと、それを繰り返してしまうんで、その癖を払拭しないと理解したことにならないらしいです。」
「へぇ〜。」
「この間違った癖を払拭するのが非常に難しくて、なかなか出来ないらしいんです。だから、投資を諦めた方が良いと言ってたんですよ。」
「ふ~ん。」
「そこで師匠が僕に、赤松さんに間違った癖が付かんようにしろと忠告してくれたんで、今日電話したんです。」
まさかここで自分が話題に出てくるとは思っていなかった結衣である。
<font color="#0000FF"><font size="3">①勝負は、拙速を好む
②固まってはならない
③10戦3勝7分を目指せ
④小損は大損の仇なり
⑤勝てると信ずるべし</font></font>