林の錬金術師

「それで、萬野くんの話の続きなんですけど！？」

「師匠の話？・・・してましたっけ？？」

「ほら、言い切らないって。」

「あー、師匠クラスになると、相場について断定的な言い方をしないってことですね。まだ、何かありましたっけ？」

「いや、男らしくないと思うのよ、逃げ道残してるみたいで。」

「あー、そう理解されるなら、絶対に喋らないですよ、師匠。ちなみに、オレも赤松さんには何も言えなくなります。」

「どうして？」

「どうしてって、赤松さんに男らしくない男だと思われたくないじゃないですか！」

「えっ、林野さんは男らしいと思ってますよ。」

「でも、言い切らないと男らしくないと思う訳でしょ。」

「ええ。」

「オレも師匠と同じで、相場の見解については言い切れないですよ。確率高く騰がると分かっている時でも、あくまで高確率なだけで、１００％じゃないですから。どんなに強気できる時でも、１００回に１回はハズレるかもしれませんし。」

「でも、１００回中９９回当たる訳でしょ。ほぼ１００％なんだから言い切って良いじゃない！？」

「あれ？最初に言いませんでしたっけ？投資は９９回成功しても、最後の１回負けただけで全てを失いこともあるってこと。」

「聞きましたよ、そのことは。」

「だから言い切ったことを信じてくれて、９９回成功し続けてボロ儲けしたらどうです？１００回目なんて絶対に失敗しないと信じ込んでる訳でしょ。そのタイミングでハズレたらどうなります？」

「直ぐに損切り？」

「絶対にハズレないと思ってるのに、直ぐに損切りします？」

「しないですね。」

「結局、最後まで強気し続けて失敗する訳でしょ。だから、言い切らないんですよ。言い切らなければ、いくら９９回連続して成功してても、今回は失敗かなぁ～って、疑う感じが残るでしょ。」


林野の力説に対して、そんなもんなのかなぁ～と思う結衣であった。

①勝負は、拙速を好む

 

②固まってはならない

 

③10戦3勝7分を目指せ

 

④小損は大損の仇なり

 

⑤勝てると信ずるべし