林の錬金術師

中村は、ポジショントレーダーである。

就職活動に有利になるだろうと考え、よろずのから兵法を学ぼうとして、この世界に引きずり込まれた男である。


「ポジショントレードが一番難しいけど、一番兵法が使いやすいから、やってみ！」


と言う無責任な一言で、今日に至っている。

「騰落レシオが、久々に80％を割って来た。」


よろずのから教わった方法を忠実に守っている中村は、こう言う展開になるまでは、梃子でも動かないのである。

ボリンジャーバンドを利用するのが基本的なやり方だが、指数を補助指標として使うのが、よろずの独特である。

ボリンジャーバンドが－２σを下回っても、必ずしも買い場とはならない。

指数が下げ切っていなかったり、下げ過ぎたりしていると、突っ込み度合いが変わるからである。

ただ、よろずのは、それ以上は教えてくれなかった。

『後は自分で記録して、自分の経験の中で高めて自分のモノにしろ！』と言っただけだった。


「全体的に広く浅く売られる展開かぁ～。これって、一段安になる展開が多い時だなぁ～。ＲＳＩや乖離率は、まだ暫くみたいだし。」


こうやって、一つ一つ根気強く分析する中村であった。

①勝負は、拙速を好む

②固まってはならない

③10戦3勝7分を目指せ

④小損は大損の仇なり

⑤勝てると信ずるべし